スペシャル企画

『ぱちんこ シン・エヴァンゲリオン』テーマソングマキシシングル
「終結の槍/終結のはじまり」発売記念|林原めぐみさん、インタビュー④

更新日:2023/12/30

『ぱちんこ シン・エヴァンゲリオン』に搭載される「終結の槍」と「終結のはじまり」の2曲を書き下ろした林原めぐみさんへのインタビュー第4弾。

声優としてだけでなく、歌手・アーティストとしても活躍する林原めぐみさん。今回のインタビューでは林原めぐみさんのアーティストとしてのこだわりや表現方法を伺いました。




その人の人生のほんのちょっと、一滴の頑張りになれたら

ーーこれまでのインタビューで作詞における世界観やジャケットの衣装など、アーティストとしてのこだわりをお見受けします。制作で心がけていることはありますか?

林原めぐみ(以下=林原):例えば、大人になって自立して、自由を手に入れて、やりたかったことができるようになった。でも、仕事や人間関係で悩んだり、女性だったら結婚や出産、育児だったり、何歳になっても悩んでいる人はいるんですよね。どこか心がさまよっていたり、SNSの世界に溺れてしまったり…。これは「終結のはじまり」に限らないことなのですが、私のラジオやアニメ、本作であればパチンコなど、どんな場面であっても曲を聴いてくれた人がふっと「あっ、もう1回頑張ってみようかな」とか、「もうちょっとで行けそうだな!」とか、そういう気持ちに触れられたら良いなと。 楽曲からエヴァを思い出して、見ていた当時とか14歳の頃を思い浮かべて、「14歳の自分だったら、今の自分になんて言うんだろう?」なんて、その人の人生のほんのちょっと、一滴の頑張りになれたら良いなと。そういうのは一貫して歌詞や声の中にあります。

ーー今だからこそ、伝えたい想いはありますか?

林原:なんか今って、SNSで大勢と繋がりながらも、すごく孤独な人が増えている気がして。繋がることだけが目的ではないので、「本当に欲しいのはそれじゃない」ということに気付いたら、辛くなくなったり怖くなくなったり、根拠なく不安になったり。 シンジくんは、お父さんとしっかり向き合って、実は、勝手に1人になっていただけで、本当は、みんなに支えられていて、僕1人じゃなかったということを自覚したように感じます。 どこかで、そういう想いを伝えたくて、作品の目線を借りて、歌詞に入れている感じです。

「感情がないわけではなくて、知らない」という表現の答えを探すべく、当時は非常にもがきました

ーーレイちゃんと林原さんが近いなと感じる部分と、逆に自分とは違うなと思う部分はどんなところですか?

林原:レイちゃんとは近いというよりも、私がレイちゃんに近づいて重なったと言う感じです。最初、TVアニメシリーズの時、何を要求されているのか分からなかったんです。庵野監督にはとにかく「声を抑えて」、「声を抑えて」と言われていました。「感情がないわけではなくて、知らない。」と。なので、私は「なにそれ?とういう意味?」とか、「それはどういう表現をすればいいの?」とか、「感情がないわけじゃなくて、知らないから抑えるって、なに?」みたいな。

ーー山寺宏一さんが「あまりにも小さい声で話す方がいて、収録なのに思わず聞き返したことがあって、それがエヴァの時の林原めぐみさんでした」とおっしゃっていたのをTV番組で拝見しました。

林原:そうですよね。普通は声を張りますよね(一同笑)。「感情がないわけではなくて、知らない」という表現の答えを探すべく、当時は非常にもがきました。心理学の本を読んでみたり、そもそも感情とは何なのかとか。

ーー感情があるのに、知らない。禅問答のような表現ですよね…。

林原:普通の人を例に分かりやすく言うと、どちらかと言うと嫌いだなあ、苦手だなあと思っている方から急にバレンタインにネクタイをもらったら、「うわあ、何?どうしよう」と困惑しながらも「ありがとう」と言いますよね。好きな方からもらったのであれば、「これは色んな人に渡しているのか、自分だけに渡したのか」と興奮しながらも「ありがとう」と言う。そういうふうに普通、人は「ありがとう」を言葉通り「感謝」の意味じゃない使い方をします。興奮だったり困惑だったり。そこをレイちゃんは知らないから、要らなければ「要らない」。感謝のありがとうは「ありがとう」なんです。「食事どうですか?」も本当に思ったから、聞く。単純に、シンプルに思ったことを言う。だから、裏を返せば、言葉1つ1つが全部本心ということ。誇張も、駆け引きもない。もはや社会の中では通用しないから、普通の人間にはできないことですよね。

ーーレイちゃんがシンジくんを叩くシーンは、レイちゃんの感情が出て叩いていると。

林原:そう。怒りだと思います。「あなた、碇司令の子供でしょ。」、「信じられないの、お父さんの仕事が。」と思ったから、叩いて言った。で、以上、終わり!なんです。こんなことしたら、どう思われるだろうかとか、そんなものはないんですよね。

レイちゃんを演じたことで人の嘘がすごく見えるようになって、しんどかったこともある

ーー人は誰でも発言する前に周りの顔色を窺ったりしますが、レイちゃんには無いと。

林原:例えば「この企画を通すためには今こういう言い方をしなきゃいけない」とかっていうノウハウが彼女はないので、レイちゃんは本当のことしか言わない。でも、本当のことしか言わないことは、自分の中の本当もごまかさない。だから、レイちゃんを演じることで、私自身にある本当にも向き合うことになって、「忙しいという言い訳で出来なかった自分を許す」みたいなバグを除去する作業を当時やったんです。そしたら、人が考えていることがすごく見えるようになって、この人は嘘をついてるなとか、分かってないのに頷いているなとか。この経験のおかげで、キャラが「こうは言っているけど、本当はどうなんだろうか?」ということを深く考えて演じることができるようになりました。今はどんな役が来ても、大変かも知れないけど、レイちゃんの時ほど苦労することはないかなって思います。

ーー感情を知らないレイちゃんを演じたからこそ、キャラクターのより深いところまで演じられるようになったと。

林原:そうですね。その後に、レイちゃんみたいに声を張らずに話すキャラクターは増えましたけど、レイちゃんは大人しいわけじゃない。感情を出さないのではなく、感情を知らない。そんな感情とは何かを探っているうちに、行動には意識的な理由もあるけれど、無意識の中にも理由がある。その理由をいちいち考えるようになりました。 一方で、レイちゃんを演じたことで人の嘘がすごく見えるようになって、しんどかったこともあります。でも、当時は随分な境地まで自分を追い詰めてしまいました。なんでこんなにボソボソ言わなきゃいけないのかが分からなかったから。で、「この表現は要らないんだ」とか、「ここは盛らない」といった、心の波のようなものが明確に分かるようになりました。

今大丈夫じゃない人に大切な言葉は、「大丈夫」という言葉ではないって思う

ーーレイちゃんを演じたことは、声優としても転機だったと思われますか?

林原:あの時に苦労して得たものは、本当に残りの人生における「伸びしろの部分」のほぼ全てだと思いますね。彼女とシンクロしたことで、自分の人生に恩恵があった。良くも悪くもって言葉を大切に使おうと思うようになりました。『カウボーイビバップ』のフェイを演じられたのも、たぶんレイちゃんのおかげですね。少し話が変わりますけど、私は女を武器にする女が嫌いだったんです。かわいこぶったり、媚びたり、なんで好かれていたりするのかと、すごく軽蔑していました。でも、(レイちゃんを演じたことで、)それって裏を返せば、私の中に「武器にできる女」がなかったから、妬んでいたんだと気付いたんです。女を武器にできるフェイを演じられたのは、私が自分も女だって認めることができたから。

ーー綾波レイを深く掘って演じたことで、歌詞なども変わりましたか?

林原:かもしれないですね。さっき言ったように言葉を大切に使おうと。「優しさ」は、時に成長を止めてしまうこともある。「大丈夫よ」という言葉は世の中にいっぱい溢れているけど、今大丈夫じゃない人に大切なのは「大丈夫」という言葉じゃないときもある。一呼吸するために、落ち着くために「大丈夫」という言葉は必要かもしれないけど、大丈夫じゃない人に内在する大丈夫じゃないモノを一緒に体感して、その人が求めるものを一緒に探すことが必要なのではないかなと。なんで大丈夫じゃないか…の根っこを見つける事への一歩。もちろん、歌は娯楽ですけど、私が歌う意味はそこにあるのかなあと思っています。

ーー長時間のインタビュー、ありがとうございました。改めまして、『ぱちんこ シン・エヴァンゲリオン』タイアップいただき、感謝いたします。

林原:こちらこそ、ありがとうございました。「終結の槍」と「終結のはじまり」が入っている『ぱちんこ シン・エヴァンゲリオン』を台として楽しんでいただくことはもちろんですが、映像や音も進化しているので『シン・エヴァ』を改めて体感して、打ちながら泣いちゃわないでくださいね!




4回に渡ってお送りした林原めぐみさんのインタビュー。「終結の槍」と「終結のはじまり」の2曲だけに留まらず、アーティストとして、声優としての林原さんの転機となった綾波レイとの物語まで多くを語っていただきました。

林原めぐみさんのエヴァシリーズへの想いが表現された「終結の槍」と「終結のはじまり」はもちろん、魂を吹き込んだレイを代表するキャラクターたちの物語を『ぱちんこ シン・エヴァンゲリオン』でご体感ください。


●プロフィール
林原めぐみ(はやしばら・めぐみ)

3月30日生  東京都出身  血液型O型。高校卒業後、看護学校に通いながら声優を志す。'86年にテレビアニメ「めぞん一刻」の幼稚園児役で声優デビュー。以降、数多くのアニメキャラクターを演じつづけている。また、DJ、歌手、作詞、エッセイ執筆など、幅広く活躍中。

『ぱちんこ シン・エヴァンゲリオン』テーマソングマキシシングル
「終結の槍/終結のはじまり」発売記念|林原めぐみさん、インタビュー①

『ぱちんこ シン・エヴァンゲリオン』テーマソングマキシシングル
「終結の槍/終結のはじまり」発売記念|林原めぐみさん、インタビュー②

『ぱちんこ シン・エヴァンゲリオン』テーマソングマキシシングル
「終結の槍/終結のはじまり」発売記念|林原めぐみさん、インタビュー③

『ぱちんこ シン・エヴァンゲリオン』テーマソングマキシシングル
「終結の槍/終結のはじまり」発売記念|林原めぐみさん、インタビュー④